コラム・傳寶美里氏(2013-08-08 09:13:46)
≪産後職場復帰が低調な技工業界での女性技工士のあり方≫
「女性の年齢階級別就業率を業界内外で比較してみると」
私が歯科技工士免許を取得してから20年が経った。出身校では男性よりも女性の人数が多かったが、就職活動で見学したラボには女性歯科技工士はほとんどいなかった。現在では女性歯科技工士のいないラボのほうが少ないかもしれない。しかし働いているのは皆、若い女性である。
厚生労働省が発表した平成23年度の女性の年齢階級別労働率は、25~29歳の77%と45~49歳の約76%を頂点とし、35~39歳の62%底にM字を描く。この現象は、子育てで休職した既婚者が復職するタイミングに一致するものと考えられている。
では、歯科技工士業界ではどうか。日本歯科技工学会の発表では、女性歯科技工士の年齢階級別就業率は39歳以下が約49%、40歳代が約22%、50歳代が約25%と、M字とはいいがたい。相変わらず価格競争の進む歯科技工業界にあって、特に大手でもなければ産休中の給与の保証は難しく、そもそも産休制度のあるラボが少ないことも復職への妨げになっていると思う。
「技工自体を嫌いになって辞めていく女性歯科技工士はいない」
こうした状況であるが、私の知る限り技工自体を嫌いになって辞めていく女性歯科技工士はいない。
労働環境さえ改善されれば戻ってくるはずである。現在は法律により、女性を雇用する場合は更衣室と女性用トイレを設置することなどが義務付けられているが、そういったことをことを気にする向きは実は少ないと思う。むしろ異常な残業時間と、過酷な状況下で長時間を過ごすことから生じる人間関係のもつれで疲れてしまい、離職していくのだと思う。
また、男女の仕事に対する考え方の違いを雇用主が理解していないことも原因のひとつかもしれない。男性と全く同じ考え方の人もいるが、女性は基本的に技術のスキルアップには興味はあるものの、役職など地位には興味がないことが多い。年々新卒者が減り、離職率も高く人手不足が常態化している歯科技工界において、パートなどの雇用形態もも含め女性歯科技工士の活躍の場はたくさんあり、ラボ経営者もそれを望んでいる。労働環境の改善には技工料の引き上げが最も有効だと考えるが、働き方は工夫しだいだと思う。女性歯科技工士諸姉には自己主張するだけでなく、きちんと周りを理解し話し合い、自分に合った働き方を見つけてほしいと思う
QDT7月号より抜粋 歯科技工士・アルモニア 傳寶美里
昨年、傳寶美里先生には江東歯科技工士会において「女性歯科技工士ラボ経営者からの発信」で講演をして頂いが、講演会場には大変多くの女性歯科技工士・女子学生の出席で大盛況だったことを覚えています。
女性歯科技工士にはもっと多くの情報が適切に伝わることが大切だと感じていたので、傳寶先生のコラムは経営者側にも多くの改善を促していることを含めて、素晴らしい情報発信と思う。
これからも女性歯科技工士のリーダー役として活躍してほしいと願うものです。